次々と明るみになる、日野自動車の不正問題。
一連の不正問題の原因として挙げているのは「関連法規の理解不足」
多くの顧客、株主、そしてトヨタ自動車が信頼を寄せていた日野自動車が「関連法規の理解不足」が原因で「不正は故意ではない」というのはなかなか信じ難いものですが、公式発表では「関連法規の理解不足」が原因とのことです。
そんな日野自動車ですが、業績のほうも散々な結果で、2021年と2022年の通期決算は、2期連続で赤字を公表するほどボロボロです。
日野自動車に未来はあるのでしょうか?
今回は、日野自動車の財務状況や業績推移を確認しつつ、今後を考える上での材料を3つ挙げてみようと思います。
最後までお読みいただけたら嬉しいです。
チャートを確認!
まずは日野自動車のチャートを確認してみましょう。
【日足】

【週足】

【月足】

日足ベースだと横ばい、月足ベースだとアベノミクスが始まった2013年の水準まで下げており、2015年の高値からおよそ1/3の株価まで落ちています。
財務状況
財務状況を確認するにあたり、挙げた項目は次のとおりです。
- 流動資産
- フリーキャッシュフロー
- 利益剰余金
- 流動負債

まずは流動負債。
この記事では「1年基準」で考えます。
1年以内に返済しなければならない負債額を示します。

流動資産
こちらも「1年基準」で考えます。
1年以内に現金にすることができる資産額を示します。

フリーキャッシュフロー(FCF)
「自由に使えるお金」を意味します。

利益剰余金
「内部留保」とも呼ばれます。
過去に積み上げた利益を意味します。
2022年3月期
流動資産 | 634,755百万円 |
フリーキャッシュフロー | 62,662百万円 |
利益剰余金 | 279,087百万円 |
流動負債 | 614,204百万円 |

これら4つの指標を使って、日野自動車の財務状況を見てみたいと思います。
「流動負債」と他4つを個別比較
「流動負債」と他4つの総額とを比較
計算式は
- (流動資産or FCF or利益剰余金÷流動負債)×100
- {(流動資産+FCF+利益剰余金)÷ 流動負債}×100
これらを表に示します。
流動負債 | |
流動資産 | 103.35% |
FCF | 10.20% |
利益剰余金 | 45.44% |
流動資産+FCF+利益剰余金 | 158.99% |
100%超…流動負債よりも多い
100%未満…流動負債より少ない
流動負債比率は120%以上だと一般的には資金繰りに困らないとされています。
「流動資産+FCF+利益剰余金」の合算だと、120%を超えることがわかります。

ただし、今回の計算式は「2022年3月決算時点での数字」です。
今後、様々は費用が膨れ上がることは想像に難くないでしょうし、あくまで参考程度でお願いします。
業績推移
次に過去11年間の業績推移をグラフで確認してみます。
【売上高】

【経常利益】

【親会社に帰属する当期純利益】

【総資産額】

【純資産額】

【自己資本比率】

親会社に帰属する当期純利益が2期連続でマイナスとなっています。
それに伴い、2022年の純資産額は前年比268億円の減少となっています。
また、会社の安定性を示す指標である自己資本比率も2021年から2022年にかけて大きく下落しました。

比較の参考として
自動車業界で一番、自己資本比率が高いのはSUBARUの53.4%です。
日野自動車は36.4%です。
ライバル企業のいすゞは41.8%となっています。
※2022年6月17日情報
今後を考える材料3選
日野自動車の不正は2022年で2回目
実は今回の不正発覚の前、3月4日にも不正行為がありました。
こちらに関しては自主的な調査により不正が判明し、自ら不正があったことを公表しています。
これに関して様々な憶測が飛び交っていますが、公式発表としては「自主的な調査によって不正が判明」としています。
この件は8月2日に特別調査委員会が報告書を公表しました。
それから10日が経ち、再び不正が発覚。
理由は「関連法規の理解不足」
今後の動きに注目です。
コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズが日野自動車を除名
トヨタ自動車、いすゞ自動車、日野自動車、スズキ、ダイハツ工業が出資する「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(以下CJPT)が、日野自動車の不正を重く受け止め、除名をすることを発表しました。
CJPTは「CASEの普及を加速させ、カーボンニュートラル社会実現に貢献すると共に、ドライバーや作業者の負担を軽減するためパートナーと現場での取り組みを推進する」という目的で設立された組織です。
日野自動車も10%出資している組織ですが、CJPTは日野自動車を除名し、出資分の株式をトヨタ自動車に譲渡することになりました。
トヨタ自動車の豊田章男社長は今回の除名決定について「お客さまをはじめ全てのステークホルダーの信頼を大きく損なうものであり、日野の親会社としても、株主としても、極めて残念に思います」とコメントしています。

今回の不正は様々なところから非難を受けており、社会的に厳しい状況に立たされています。
トヨタ自動車は日野自動車の株式を50.1%保有する大株主であり、親会社でもあることから、今回の不正には厳しく対応せざるを得ないのでしょう。
どうやって巨額費用を支払うお金を捻出するか?
日野自動車の2022年3月末時点での、財務内で捻出できるかもしれないお金は次のとおりです。
- フリーキャッシュフローは626億円
- 1年以内に換金できるとされている流動資産は6347億円
- 利益剰余金は2790億円
2022年の通期決算にて、最終利益は-847億円という大赤字を叩き出したばかりです。
今後、どのくらいの台数がリコール対象となるのか。また、物流企業の「エクスプレス・フレイト・インターナショナル」(フロリダ州)など4社による集団訴訟はどうなるのか。出荷停止措置の解除はいつくらいになるのか。
利益が入らないのにリコールによる出費や訴訟費用などが重くのしかかります。
2023年通期の業績は覚悟した方がよさそうですね…
まとめ
日野自動車のトラックを含む製品は間違いなく、「経済の血液」としての役割を果たしています。
だからこそ、今回のような不正問題は残念だと思います。
時が経つにつれてどんどん明るみになる日野自動車の不正問題。
親会社のトヨタの動向も気になるところですね。
今後も注視していきましょう。
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